Mon ami 〜De Reim〜
『私の大っ切な友達デス』
友達……
君は言った。
だが、彼は本当にそう思ってくれているのだろうか……
『ブレイクって……昔からあんな感じなわけ?』
オズ様に問われ、私は即否定した。
オズ様は勿論、幼い頃より彼を知っておられるギルバート様ですら今の彼しか知らないだろう。
昔は笑いもしない男だった。
今の彼は常に飄々としていて、何を考えているのかも行動も全く読めない。
一言で彼を言い表すなら「変人」と言う言葉がまさにぴったりだろう。
丁寧に聞こえはするが、人を食ったような物言いと、そんな言葉の中に含まれる人の心を読み取るような鋭さが、時には非情なまでの言葉を何の躊躇もなく吐き捨てる。
しかし……その言葉はまるで自分に言っているようで、彼は決して自分の弱さを見せない。
口にしない。
決して……
血だらけでレインワーズ家の敷地内に倒れていた男。
それが彼だった。
片目を失い、瀕死の状態のところをシャロンお嬢様に発見された。
素性も、何故あんな場所で倒れていたのかも謎のまま、彼はレインワーズ家で手厚く保護された。
白磁のような青白い肌に白い髪と紅い瞳。
頑なに閉ざした心。
一体どんな目に遭ったのか、彼は身体だけでなく精神までも壊れかけていた。
『私に構うな!……近寄るなっ!』
『私を……私を見るな――――!!』
全てを、いや、己の存在すら拒絶するかのように繰り返す自傷行為。
安易に近づけば、鋭い刃で切り裂かれるような殺気を纏い、まさに手負いの獣のようだった。
そんな彼を変えたのがシャロン様の母君だった。
あの方の優しさに包みこまれ、彼は少しずつ変わって行った。
壊れかけた心を取り戻したように……笑えるようになった。
そして、彼はレインワーズ家に仕えるようになり、パンドラの構成員となった。
構成員となった後、彼はチェインと正当な契約を交わし、計り知れない力を得た代わりに己の余命を犠牲にした。
だが、それは以前の契約による為のものだった。
彼は……
彼に残された時間は残り少ない。
力を使う度に削られていく命。
それでも、彼は決して他人に寄りかかることをしない。
それはまるで己に罰をあたえるかのように……
彼は……
誰よりも傍にいるシャロン様にも。
私にも、誰にも心を開いてはいない。
どれだけ傍にいても、彼は何時も孤独だ。
彼は何を求めているのだろうか。
己の命を削ってまでも何を知ろうとしているのだろうか。
『私の大っ切な友達です』
君が言った。
何時ものように本気かどうかわからない茶化すような口調で。
君がそう言ってくれるなら、私は君の友であろう。
君がそう望むなら――――――――
8.29
※Mon ami=大切な友